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眩しかった日のこと、そんな冬の日のこと

2017-01-21 淡路島にて / Awaji island

『narcissu』というノベルゲームを知っているか?

2005年に発売された小さな同人ゲームで、ノベルゲームにしては立ち絵と呼ばれたりするキャラクターの絵が一切なく、ほぼ音楽がついている短編小説といった一風変わった出来だ。ボリュームについてもかなり少なく、数時間もいらずに読み終えられるような作品だった。

そんな質素な、言い方選ばないと貧相だともいえる同作だか、世界中で100万越えのDL数があったりする。独特で、淡々とした筆致で『死』という究極なテーマを描くストーリーはユーザーたちの心を掴んで離さず、私も、もちろんそのうちの一人だ。タイトルの「眩しかった日のこと、そんな冬の日のこと」も同作品のコピーからきている。

作品そのものの話はこれぐらいにしておこう。この日は作中の重要な舞台である淡路島に訪れた。

島について最初に向かったのは当然灘黒岩水仙郷だった。この日は風が強く、雲がかなりの勢いで流れていた。黒い雲がちょうど空の半分ぐらいを占め、太陽が現れては隠れ、まだら模様の光を注いていた。まさに眩しい冬の日だった。

来る前の想像を覆して、水仙は平野ではなく、海沿いの小高い丘を覆うように生えていた。ちょうど水仙まつりの季節だったのもあり、頂上までに続く小道は観光客に溢れていた。

それを海の逆側の駐車場から眺めていた時は「これは作中のように、海まで白い花が連ねるような光景が見えなさそうだ」と考えていたが、いざ頂上にまで登ってみると、見えたのは海まで続く緑の絨毯と、それに散らばる白い星たちであった。

すでに午後4時前だったのもあり、太陽の色が暖かくなり始めていた。それ故かどうかはわからないが、青く冷めていた1月の海がややエメラルドの色を帯びているように見えた。

セツミ(『ナルキッソス』のヒロイン)が見たのも、この暖かい光を湛えた冷たい海だったのだろうか。きっとそうだったであろう。

福良の港まで戻った時には、すでに夕日が水平面の下まで沈んでいて、微かな夕焼けだけが名残惜しく残っていた。作中は夕日についての描写は特になかったが、この時は淡路島の日暮れも綺麗なものだと気付いた。

2日目に行ったのは鳴門海峡だ。天気は更に崩れ、大鳴門橋の近くまで来た時は嵐のような強風が吹き荒び、体温を奪っていた。遠くの水平線には金色に輝く太陽があったが、それが却って今自分が立つ場所の寒さを実感させる。

しかし再び港に戻ったときにはもうすっかり晴れ模様だ。カモメが飛び交う船着き場には潮風が優しく頬を撫で、先程まで見ていた光景がまるで嘘のようだった。

観光全般に言えることかもしれないが、この島には普段のせわしなさを忘れさせる。7年も過ぎた今日になっても、古い写真を見返しているとカモメの鳴き声と水仙が揺れる姿が蘇ってくる。港に吹く風はそれほど磯の香りがしなかった。1月の陽射しは案外暖かかった。17年前にナルキッソスを読んでいた自分も、7年前に水仙に囲まれていた自分も、今の自分の中に生きている。そんな気がする。

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